本当に愛し合うこととは何のか?
「四月になれば彼女は」
あらすじ
4月、はじめて付き合った彼女から手紙が届いた。そのとき僕は結婚を決めていた。愛しているのかわからない人はとー。
天空の鏡・ウユニ塩湖で書かれたそれには、恋の瑞々しいはじまりとともに、二人が付き合っていた頃の記録が綴られていた。
ある事件をきっかけに別れてしまった彼女は、なぜ今になって手紙を書いてきたのか。時を同じくして、1年後に結婚をひかえている婚約者、彼女の妹、職場の同僚の恋模様にも、劇的な変化がおとずれる。愛している、愛されている。そのことを確認したいと切実に願う。けれどなぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去っていってしまうのかー。
失った恋に翻弄される、12ヶ月がはじまる。
この本を手に取った時、 作者名から「世界から猫が消えたなら」を思い出した。ファンタジーな物語だった為、今回もそうかと思って読んでいたら、完全恋愛純文学だった。愛とは恋愛とは何のかと悩み、男女の関係は絡み合い、過去と未来の恋路を描いた作品だった。
藤代は恋愛に鈍感だったのだろう。物語の終盤まで、なぜ9年ぶりに元恋人、ハルから手紙が送られてきたのか藤代は分からなかった。恋人から逃げられ、前の恋人にも逃げられていた。原因はなんなのか。それは、恐らく「飽き」ではないだろうか。燃えるような恋はいつまでも続きはしない。いつか燃える炎は消えるように、恋の情熱も消えて行ってしまうのかも知れない。一時的な恋は続かない、でも恋に落ちたのは事実であり、なんだかわからないまま続けた藤代。恋人が家から出ていき、考える。本当に好きなのか。
恋愛という手で掴めないものを、考え、感じ、手に入れようとする者たちが語り合い、情を深めていく物語で恋愛とは何なのかと問い詰められた感じだった。ハルの手紙から始まる恋物語に触れ、恋について考えさせられた。
*四月になれば彼女は 川村元気 文藝春秋*
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