将来の話をしよう

「いまさら翼といわれても」を読んで 

 今回は6篇に渡る、短編集だった。奉太郎の「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」と言うようになった過去の話「長い休日」は特に印象に残った。確かに、素直な何でも言えばやってくれるという子は先生にとって都合がよく扱いやすい。しかし、当の本人はどう思うだろう。便利に使われていたなんてわかった途端、先生への信頼なんて全て失うだろう。奉太郎の過去の話は現実世界でもよくあることだ。人にはどこかしら、楽したい、面倒だという感情が出てくるものだ。今回、「長い休日」を読んで改めて、人の愚かさを思い知った。奉太郎の過去が明らかになり、彼の見方が変わった物語だった。
 また、他には千反田が行方をくらます本のタイトルにもなっている「いまさら翼といわれても」も良かった。千反田は豪農千反田家の跡取りを意識して生活してきた。しかし、急に跡を継がなくてもいい、好きな道を選べと言われた。そんな時、合唱祭のソロパートの歌詞が自由の憧れを歌うものだった為、合唱祭から行方をくらましたのだった。千反田の悩みは進路だった。誰もが通る道。千反田の言う「いまさら翼といわれても、困るんです」は胸に響いた。おそらくこの翼にはいろいろな思いが詰め込まれているのだと思う。自由、将来、解放、など。千反田にはいままで翼がなかったにだから、困惑してもしようがない。しかし、これからは翼を持った千反田がどう変わっていくのか見てみたいと思った。

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