届かなかった恋

「誰も知らぬ」

    恋は人を動かす。安井は芹川の恋話を聞き、美しく、羨ましく感じた。芹川の現実的でない恋が安井の心を揺さぶったのだ。そんな時、向かいに住んでいる芹川の兄が訪ねてきて、芹川が消えたことを告げる。きっと男の元へ行ったのだろうと思うが、芹川の兄は連れ戻そうと行ってしまう。安井はこのまま自分も兄について行ってしまいたいと思う。いつの間にか、自分も恋をしていたと気づくのである。恋は人を動かす。しかし、その恋は届かないこともあるのである。誰にも伝わらなかった恋は何処行くのだろうか。きっと、良い思い出として消えて行くのだろう。
 
*女生徒 太宰治 角川文庫*

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