閉鎖空間での人の行動って怖いよね

「インシテミル」を読んで

インシテミルを読む前、題名から何も内容が想像出来なかった。ただ、作者が米沢穂信さんと言うことで好奇心と期待を込めて読んでみた。
今回の米沢さんの作品は、人が殺されていく本格ミステリだった。舞台は、地下空間(暗鬼館)であった。太陽もない空間での生活は心を不安にさせる。そして、読者にも地下空間という舞台は緊張感を与えてくれた。特に地下空間の構造を想像させてくれる文章が多く、先の見えない廊下など、人の心理を織り交ぜて説明されていて緊迫感が伝わってきた。
 まず始めに殺された西野だが、9ミリのセミオートの銃で殺された。初めは銃の種類が問題になるのかとおもっていたが、終盤になってこの意味がよく分かった。違う系統の銃が出てきたのだ。しかし、一般人ならどちらも同じ銃だろという概念を持ってきて、作中の人物たちが困惑している様子が描かれ、おもしろいと思った。作者はきちんと状況下での心理状態も含めて、このミステリを書いていると思った。初めは西野を殺したのは須和名だと思っていた。お嬢様を装い、お金欲しさに実は殺したのではと思ったのだ。しかし、予想は外れた。西野は自殺したのだった。理由は明確にはされていないが、彼の自殺は作品の場を動かしたキーストーンだっただろう。
 ところで、上で疑ったように須和名も重要人物のように頻繁に描かれる。何かあるだろうと、期待していたが最後の最後に須和名から結城(主人公)への手紙で明かされた。それは、次の実験への誘いだった。インシテミルはこの手紙の内容が書かれ終わりとなりが、この手紙について少し考えてみた。手紙には、須和名家でも、実験をすることになったという。これは、どういうことか。須和名家はこの実験の関係グループに入っているとみていいだろう。しかし、気になることがある。それは、なぜ須和名自身がこの実験に参加したのかということだ。須和名は自身の身を危険に曝しながらも参加した。作中で観察者だったんだろうと言われるが否定している。これを信じるとすると、須和名は実験の関係グループだとしても実験の主催者とは仲が良くないことのなる。つまり、須和名はスパイだったのでは?実験の内容を把握し、次の須和名家が開催する実験の糧とし、そして須和名の名をあげ投資資金を集める。最大の悪は須和名だったのかも知れない。

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