小心者の警察官

「夜警」を読んで 

 世の中、警察という職業は危険な仕事として見られることもある。川藤広志巡査は勇敢にも拳銃で刃をもつ犯人と戦い、殉職した。しかし、その死の裏には秘密があった。川藤が勤務中に暴発した拳銃のことを隠すための仕業だった。なぜ、隠そうとしたのか。それは、川藤小心者だったからだ。小心者は臆病な生き物で、リスクを背負うことが出来ない。川藤も実際、何か問題を起こしてしまったら兄に助けを求めていた。結局のところ小心者は他人に依存しているとも言えるだろう。
 「夜警」では、語り手が上司にあたる柳岡の回想が主に中心に進められた。部下の対する思い、この時どう思っていたなど、感情を露わにして描かれていた。読み進めていくうちに段々と部下たちの性格が知れてきて、感情移入しやすかった。最後の柳岡が自分の頭の中で何故、今回の事件が起きてしまったのか静かに解決してしまうあたり、綺麗な終わり方だった。  

*満願 米沢穂信 新潮社*
 

コメント