読書感想文の参考に使っていいよ

「図書館奇譚」を読んで 

 本好きなら、たまらない図書館という存在。そんな図書館を舞台にしたこの「図書館奇譚」はちょっと怖い話である。
 本を借りに来た少年は図書館の地下へ通されるのだが、そこには顔に小さなシミがつき、はげていて、眼鏡をかけた老人がいた。その老人は、少年の探していた本を持ってくるのだが、この本は貸出禁止だからといい、もっと地下の閲覧室で読ませようと少年は地下へ案内された。しかし、閲覧室には羊のかっこうをした羊男がいて、今度は牢屋に連れていかれてしまう。なぜ、牢屋に入れられるのか羊男に聞くと、知識を蓄えた脳はおいしいから牢屋で本を読ませた後、老人が頭を切られて脳を吸われてしまうことを聞く。少年は絶望するのだが……。
 この物語を通して、私が感じたことは断る勇気をもつことだ。少年は老人の言葉を断ることができないで地下に閉じ込められてしまった。老人は少年の脳が目当てで、本を読みに来た少年を連れて行き、少年は老人の善意に嫌だと思いながらも、断ったら申し訳ないという善意で付いて行った。人の善意には裏がある。時には疑い、怪しいと思ったことには足を踏み入れないことも大切だ。
 またこの物語には、変わった人物が出てくる。それは羊男だ。なぜ、羊のかっこうをしているのか?なぜ、地下に住んでいるのか?物語の最後までそれは明かされていない。私が考えるに、羊男は夢の象徴をしているのではと思う。少年の怖い夢だったのだと。しかし、物語の最後は夢落ちかわからない話で終わっている。実際、少年は図書館の地下で靴を置いていくのだが、家に帰って後日になっても靴はなくなっていた。つまり、夢落ちではない。しかし、羊を暗示させることで夢のような現実の物語にしたかったのではないかと私は思う。
 「図書館奇譚」という題名だけあり、いろいろと考えられる物語だった。短い物語の中に含まれている作者の思いを考えながら、読むのも面白いと思う。夏といえば怖い話だが、そんな怖い話の舞台には選ばれなさそうな図書館を舞台にした物語は新鮮だった。図書館に行くのが怖くなりそうだが、本を読みたいから、行かないということはできそうもない。
 
*図書館奇譚 村上春樹 新潮社*

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