汝の怒りの上に日を沈ませてはならない
「青空のむこう」を読んで
自分が死んだら、どこへ行くのなんて誰にも分からない。天国や地獄なんてものがあるけれども、どれも生きている人間が考え出したもので、実際死んでみてきたわけではないのだから。「青空のむこう」ではそんなわからない死んだ後の話が舞台だ。交通事故で不運にも死んでしまったハリー。死者の国では、この世に未練を残した者がさまよっていて、未練のない者は死者の国の果てにある彼方の青い世界へと行くのだという。しかし、ハリーは未練があった。死ぬ直前に姉とケンカしてしまったのだ。ハリーは約150年前に死んだアーサーと共にこの世に降りてくる。未練を晴らすために……。
ハリーは自分が死んだ後の世界に期待をしていた。自分がいないことで、うまくいっていない世界を見てやろうとしたのだ。しかし、現実はハリーが居なくてもうまく回るようにできているのかも知れない。ハリーが学校に行ってみると、そこには自分を忘れたように楽しそうな親友ビートがハリーが嫌いだったジェリーと遊んでいるし、他のみんなも楽しそうな日常が続いていた。
自分が死んだ後の世界なんて見ない方がいいのかも知れない。誰かが、自分のことを覚えている。そんな思いで見てみても、誰の頭の中なんてみることなんて出来ないし、まして覚えていますか?なんて聞くことも出来ない。そんなの悲しいだけだ。生きている人たちを見たら、うらやましく感じることだってあるだろう。死んだら何にも出来ない。なぜなら、この世に死んでる者はいないのと等しいのだから。
しかし、ハリーには救いがあった。教室の後ろの壁にハリー宛の手紙が飾ってあった。クラスのみんなが手紙を書いていてくれていたのだ。その中でも、ハリーの嫌っていたジェリーの手紙が心に響いた。ハリーが嫌っていたジェリーがいじわるばかりしていたけれど、本当は仲良くしたかったということ。すれ違いによって起きていたけんか。ハリーは戸惑っていた。長年のお互いの対立がハリーが死んでしまったことで、本当の気持ちが分かったのだ。
人の本当の気持ちなんてものは、他人からすれば分かりはしない。どんなに仲が良くても、どんなに仲が悪くとも分かりはしない。本当も気持ちは形にしない限り見えないのかも知れない。
死という題材にもかかわらず、悲しい現実をみるだけでなく、ハリーのユーモアな考えは作品を楽しい作品に変化させていた。
これから彼方の青い世界へ旅経つ、ハリーの現実と向き合うためのお話というべき美しい作品だった。
*青空のむこう アレックス・シアラー 求龍堂*
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