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本当に愛し合うこととは何のか?

「四月になれば彼女は」 あらすじ 4月、はじめて付き合った彼女から手紙が届いた。そのとき僕は結婚を決めていた。愛しているのかわからない人はとー。  天空の鏡・ウユニ塩湖で書かれたそれには、恋の瑞々しいはじまりとともに、二人が付き合っていた頃の記録が綴られていた。  ある事件をきっかけに別れてしまった彼女は、なぜ今になって手紙を書いてきたのか。時を同じくして、1年後に結婚をひかえている婚約者、彼女の妹、職場の同僚の恋模様にも、劇的な変化がおとずれる。愛している、愛されている。そのことを確認したいと切実に願う。けれどなぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去っていってしまうのかー。  失った恋に翻弄される、12ヶ月がはじまる。

コーヒーの味はいかがでしょうか

「コーヒーと恋愛」と呼んで 私はこの本に出会い、恋愛とコーヒーが異常に絡み合う作品で驚いた。毎回のように出てくる珈琲の文字は圧倒的だった。  この作品は題名通りに珈琲が主役と言ってもいいくらい、珈琲が関わってくる。登場人物は坂井モエ子、お茶の間で人気の女優でコーヒーの淹れ方がうまい。塔之本勉、8つ下のモエ子の夫で舞台装置家として新劇で働く。丹野アンナ、売り出し中の若手女優で芝居を通し、勉をモエ子から奪う。菅貫一、可否会会長の資産家でモエ子の相談相手。この人物たちが主に、作品に大いに関わってくる。  まず、勉について。モエ子は勉のことを夢を追いかける努力家のような人間と言っているが、はっきり言ってヒモでだらしない奴だと思った。モエ子に稼いで貰っているお金で生活できているのに、新劇ばかりに熱を注ぎ、まともにお金が入らない。彼はモエ子に甘えていたのだと思う。挙句の果てには、アンナと共に生活すると言って、家を出るという不倫。モエ子の精神が悪くなるのも頷けた。  次にアンナ。彼女は図々しく、そして男に惚れやすい女だった。彼女も言動には意味がある。とにかく売れたいのだ。その為には、何でもやるような女のように映った。  最後に菅。彼は可否会の会長でメンバーであるモエ子の8つ上である。彼はモエ子が不倫された時、再婚相手として縁談が来たのだが、彼はモエ子の淹れたコーヒーの味に興味があったのだ。その為、モエ子には自分自身を見てもらえないと見透かされてしまう。彼はコーヒーに憑りつかれた亡者だった。  こんな感じで作品に出てくる登場人物たちは癖がある。特に、モエ子は皆から女としてではなく、コーヒーを淹れるのが得意な女優として扱われることが多く、特殊な人物だと思った。深い泥沼ような恋愛関係と、そこに加わるコーヒー。コーヒーの苦い味わいのような恋愛模様が面白い作品だった。 *コーヒーと恋愛 獅子文禄 ちくま文庫*

詩の代表者

「きょうの私にさよならしましょ。」を読んで 金子みすゞと言えば、誰でも一度は聞いたことのある詩人だろう。この本は金子みすゞの詩を集めた本である。  金子みすゞは26歳という若さでこの世を去っている。彼女はそんな若さで、日本に残り続ける詩を書いたと知った時は驚いた。改めて、金子みすゞの詩を読んでみたいという思いで、取ったのがこの本である。  本書で心に残っている詩は、やはり有名な「私と小鳥と鈴」だろう。小さい頃読んだが、今でもよく覚えている。改めて読んでみても、良い詩だなと思った。「鈴と、小鳥と、それから私、」というフレーズが得に良い。自分中心になりがちな詩を、他を優先して私ときている。金子みすゞの他人を思う気持ちがよく出ていて素敵だ。他には「おさかな」という詩も気になった。魚だけは人間の世話にならず、食べられてしまい可哀そうだという詩だ。今では、養殖業なども盛んになり、魚を育てることも多くなったが、やはり魚といったら釣りだろう。金子みすゞは、そんな魚たちが何にもしていないのに人間に釣られ、食べられるのが不思議だったのだろう。魚の気持ちにもなれる金子みすゞだったのかと思った。  詩という短い文章に気持ちや伝えたいことを詰め込むのは難しいと思う。しかし、金子みすゞはそんな綺麗な詩をいくつも作っていた。普段は気づかない視点からの思いを綴った詩、動植物たちからの目線、季節、天候、いろんな詩があり、どの詩もスッと心に入ってくる。金子みすゞの考えが広がれば、誰もが素敵な思想を持つことが出来ると思う。亡くなっても、語り継がれていく金子みすゞの詩。彼女の詩には、人の心を掴む言葉が詰め込まれていた。 *きょうの私にさよならしましょ。 金子みすゞ 小学館*

自らの誇り

「満願」を読んで 藤井は、お世話になっていた鵜川家のことを思い出していた。鵜川妙子藤井の第二の母といって良いほど、面倒を見てくれていた。しかし、鵜川妙子は殺人を犯してしまった。  裁判というものは、嘘か本当か分からないこともある。被告人がどういった思いで、事件を起こしたなんて本人以外分かりやしない。妙子も結局、藤井に直接、真相を話さなかった。彼女は立派だったのだ。誰にも真相は言わず、先祖を誇り、自らも先祖を模倣し誇ったのだ。何を誇りに思い、何を信仰するのなんて人それぞれだろう。人は誇りが無ければ、上手く生きていけないのかも知れない。殺人を犯してでも、守りたかった誇りがあった彼女に強い意志を感じた作品だった。 *満願 米沢穂信 新潮社*

守る決意

「関守」を読んで     おばあさんの孫を守ろうとする決意は強かった     ライターである彼は桂谷峠の記事を書こうと調査に行った。途中ドライブインがあり、立ち寄るとおばあさんがいた。おばあさんは峠での事件を知っているようで、聞き込みを始めた。しかし、それが悪かった。おばあさんは初めの事件の真相を隠す為、事件に関わる者たちを葬っていたのだ。彼も後に殺されてしまうだろう。     おばあさんは事件の真相を隠しながら、ライターである彼を騙していた。彼の質問に答えながらも、彼から記事の材料に使われながら、油断をさせた。眠らせる直前、おばあさんは冥土の土産のように彼に真相を話していた。私は思った。彼女こそ都市伝説級の化け物だと。 *満願 米沢穂信 新潮社*

表沙汰にされた罪

「万灯」を読んで 外国での交渉というのは、日本と全く違って大変なのだろう。それでも何とか、お金があれば解決してしまうことも多い。しかし、一番厄介なのは、お金はいらないという者たちなのかもしれない。地元を愛し、豊かにしたいという気持ちが強く、他人に荒らされたくない。これは、開拓したい企業としては痛手である。  井桁商事の伊丹はパングラデシュの天然ガスを手に入れる為、天然ガスのパイプラインの途中にあるボイシャク村に交渉に行くがなかなか上手くいかない。そんな中、村から呼び出しがあり行くと、他会社であるOGOの森下もいた。二人は開拓を拒むアラムから、パングラデシュの未来の為、天然ガスは渡さないと言われた。しかし、アラムに反対の村人たちもいた。伊丹らはアラム反対者と共にアラム殺害へと踏み出す。アラム殺害後、事業は上手くいったと思ったが、森下は仕事を辞めていた。伊丹は森下殺害へ思い至った。森下が白状する前に。  この作品では、会社の事業の為にいろいろな人が怪我をしたり、亡くなったりする。これから得られる教訓は、やりすぎたことには報いがある。きっと伊丹は事業の為といい、人間的感情を捨て、殺害を犯した。結局事態は、ばれてしまう。森下の持ち込んだコレラにより、捜索されてしまうのだ。ばれない隠し事なんてないのかもしれない。 *満願 米沢穂信 新潮社*

柘榴の赤い目

「柘榴」を読んで 女の男を手に入れようとする欲望は怖いのだ。何としても手に入れたいという気持ちが膨れ上がる。  父は元々ダメな人間で生活力が無かった為、姉である夕子は離婚する際に親権が父にいくように企てた。それは、夕子自身と、妹の月子の体に真鍮製の靴ベラで傷をつけることだった。そうすれば、母が子を虐待していると思わせられるとしたのだ。案の定、親権は父に渡るのだが、どうしてそこまでして父に肩入れしたのだろうか。  夕子は、実の父に恋に近い感情を抱えていたのではないだろうか。柘榴のエピソードからそのような感じが見受けられる。もう一つに月子に嫉妬していたという感じも見られる。月子は自分よりも美しくなる素質があると言っている。そこで、月子にも虐待に見せかける為、夕子自ら月子に傷をつけている。虐待に見せかけるにしても、妹にも傷を作らすなんて、これには夕子の嫉妬心が含まれていたに違いないと思う。  この話には柘榴が出てきて、それが夕子と父の間の距離を近付ける。夕子は父に与えられた柘榴を口にして、父から離れられなくなったのだ。まさしく禁断の果実を食したように。柘榴の実の中の沢山の小さい果実を食べると甘酸っぱいように、夕子も父の甘い誘惑に落ちていったのかもしれない。 *満願 米沢穂信 新潮社*