巡り行く春 (5)
「巡り行く春」 蕾が芽吹き、軸が伸びていく。そして、小さな花が咲き始めた頃。小さく丘陵地になっているこの地帯は、子供たちの賑わう声でいっぱいである。駆け巡る風が、暖かい春の匂いを遠くへ飛ばしていく。 「こんなにも小さくなっちまって……。ただの切り株じゃないかい」 綺麗な丸形の切り株には防腐剤が塗られ、塗料でコーティングされている。 幅5mはある切り株にはたくさんの子供たちが座っていたり、上に乗って遊んでいる。 「あんたも歳だったからなぁ。ここ一帯の土地が開発されて、遊園地になったって風の噂で聞いていたがあんたがこんな姿になっているとは思わなかったよ」 セキセイインコの背中は小さく震えている。 「でも、あんたはたくさん子供たち一緒に居られるんだから良いのかな?ずっと誰かの側に居たかったような顔してたからな」 一人の男の子が切り株の上で踊っている。老木の跡は若い世代の集いとして活躍をするのだろう。 「この小さな体で一羽、自給自足の生活というものは大変だし、俺を嫌う人間や生きるには厳しい環境があることも知った。でも、美しいものもたくさんあることも知った」 セキセイインコは記憶を巡らせる。たくさんのことを語った。しかし、一度として会話が成り立ったことは無かった。 「なぁ、あんたはここに居て何を思っていたんだ?俺の話を聞いて楽しんでくれていたのか?話し相手がいない俺にとっての拠り所だったあんたがいなくなっちまったんだ」 頬に伝うものがあるように感じた。切り株の縁に止まっての独り語り。きっと側から見れば滑稽だろう。しかし、セキセイインコは何故だかこの老木が話を聞いてくれているように感じていたのだった。 「俺はあんたがいたからいつでも戻ってこれる故郷のようなものをここに感じていたんだ。あんたがいなくちゃ何処にも行けねぇ……。俺も歳だ。そろそろ旅も終わりにしようと思う」 子供たちを照らす陽の光は傾き始めている。 マイクスピーカーから軽快な口調で男の声が響いた。 「このまちの出身である、若くして都市開発に従事しているあのキング博士が寄