ノックで始まる物語
「ノックの音が」を読んで
全ての物語が扉をノックされるところから始まるという統一性のある短編集だった。次はどんなノックから、話が展開するのかとワクワクさせられた。物語一つ一つが短く、読みやすいながらも最後に落ちをつけながら終わらせてくる、すきっりとした作品だった。
特に「しなやかな手」という題で登場する、殺し屋と殺しの対象の男が会話で相手を取り合う話は印象に残っている。男が殺されるかの瀬戸際で繰り出す警察へ殺し屋を突き出す作戦が、その殺し屋の最後の一言で消え去るのは驚嘆した。まさか、と思った。物語の続きが目に浮かぶ面白い物語だった。
ノックという単語から繰り出されるサスペンスやコメディーなど、さまざまなジャンルを楽しめた。そこには、長篇では描くことができない短編であるからこそできる仕業なのだと思う。
*ノックの音が ・ 星新一 ・ 新潮文庫*
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