Jacks ゾウ
学者である私は、ある熱帯の島の調査に来ていた。しかし、私としたことが鬱蒼とした樹林に迷い混んでしまった。人影は無く、きっと助けも来ないだろう。自力で抜け出すしかないか。
木々の枝が私の進行を妨げるように突き出している。
「痛っ!」
腕を鋭利な枝先に引っ掛けてしまった。身体から血液滲み出てくる感覚はいくつになっても慣れない。
暫く突き進むと水の流れる音が聞こえた。川に沿って歩けば何処の村に着くかもしれない。淡い期待を抱きつつ、樹林を抜けるとそこは大きな湖だった。
何処にも繋がってないなかったが、一先ず休憩をすることにした。
湖の水を手を掬い、一口含んでみた。すると、手足の疲れが急に取れ、更に枝で切ったはずの腕の傷が治っているのに気がついた。
これは、大変なことが起きた。
学者として、これ程の発見は聞いたことがない。
私は早速、水を瓶に入れて採取した。
三頭の像が向こう岸の木々の中から出てきた。三頭のの背中にはそれぞれ上裸の男が乗っている。助かった!呼びかけようと立ち上がった。
「dhgduhcxgjkcdetubcj!」
真ん中の像に乗る男が、今まで聞いたことのない言語で叫んできた。
私は悩んだが、ここで助けてもらわなければ後がないと思い、助けて欲しいという意思を大きく手を振って示した。
それを見た男は、指を口に当て甲高い音を鳴らした。
その途端、三頭の像が鼻を高く上げ、ものすごい勢いで泳いで来た。近づいて来る!泳ぐ獣が大きくなっていく。湖の中を器用に泳いでくる様子は悍ましく、畏怖すら感じる。
逃げなくては。
突き刺して来る枝木にぶつかりながらも、一度も振り返らずに、ただひたすらには走り続けた。
気がつくと、私はある街の寝室で寝ていた。窓からは車や綺麗な服を着た人々が歩いている。
家の主人に聞くと、私は道路脇に倒れていたらしい。
村のことを聞くと、知らないの一点張り。街周辺の地図を見せてもらっても、村は存在していなかった。
身体を簡易ベッドから起こそうとすると、全身に痛みを感じた。徐に自分の裸体を見ると、巨大な紐で巻きつけられたような痣が残っていた。
そして、採取した水もただの泥水になっていた。
今でも思い出す、あの時の悍ましい光景を。
私はもう死期が近い。これを読んでいる者に伝えたい。あの島には近づいてはならないと。
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