甦る記憶

「エンジェル エンジェル エンジェル」を読んで

 ばあちゃんが人の手を借りないと動けないように衰弱してしまった時、自分はどうしただろうか。自分は変わり果てたばあちゃんと向き合えるだろうか。いや、向き合えないだろう。

 この物語では、小学校くらいの歳のコウコとばあちゃん(さわこ)が交互に語り手となって進んでいく。ここで面白いのがコウコ視点では現在の生活、詳しく言うとコウコと昔と今の記憶がごっちゃになっているばあちゃんとの会話が展開され、ばあちゃん視点では昔話のように、ばあちゃんが幼いコウコくらいの歳の頃に戻って幼い頃のばあちゃん視点で話が展開される。

 ばあちゃんが犯してしまった小さき頃の罪が長い時が経ち、現在のコウコの言葉により解放される場面はばあちゃんの安らかな笑顔が思い描かれる。

 生と死の思い、考え、物語。いつかは誰もが通る生と死の間際を描く梨木先生の物語は、たとえばあちゃんが亡くなってしまっても後味が悪くないエンドであり、美しい余韻を残してくれる。

 その中でも「エンジェル エンジェル エンジェル」はダブルヒロインで描く、生と死の物語という面白い構成だった。

*梨木香歩、エンジェル エンジェル エンジェル、新潮文庫*


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